Santiago
サンチャゴの街は静まりかえっていた。ほとんどの店のシヤッターが降ろされ、道路を行き交う自動車の数もまばらで、野良犬が道をうろうろとしていた。人もまばらで、薄気味悪い。犬嫌いの僕は、犬と目が合わないように、素知らぬ振りをしながら、早歩きで街の中心地へ向かった。クリスマスなんだからもう少し街に賑わいがあっても良さそうなものだが、クリスチャンのチリの人たちにとって、神聖なクリスマスは、教会のミサに行って、自宅で家族と過ごすものらしい。

街の中心に位置するカテドラル
その中でも一際存在感のあるカテドラルに入ると、多くの人々がミサに参加していた。チリカトリックの総本山であるこのカテドラルは、見事なステンドグラス、彫像などで美しく装飾されていた。パイプオルガンの美しい音色に併せ、聖歌隊の賛美歌が聞こえる。厳かなで、神聖な空間だ。僕たちは最後尾の席に座らせてもらい、美しい歌声に耳を傾けた。心がすごくクリアになるような気がした。これからの旅の安全と成功を祈り、カテドラルを後にした。

緑溢れるサンタ・ルシアの丘
翌朝、僕たちはプンタアーレナスを目指した。チリ・パタゴニア最大の都市であるプンタアーレナスはスペイン語で「岬の先端」を意味する。本当に今までいろんなところを旅してきたが、ついに大陸の先端まで行ってしまうのだ。そう考えるだけで、ワクワク度が増してくる。しかし、こんな僕とは反対に飛行機嫌いの妻は不安そうな顔で、プンタアーレナス行きの飛行機を待っていた。というのも、パタゴニアは非常に風の強い地方なので、飛行機が激しく揺れることは必至で、欠航することも多々あるらしい。
「飛行機は揺れるかも知れないけど、恐怖の向こう側、パタゴニアには今まで見たこともない素晴らしい自然があるんだ!」
と言って聞かせ、飛行機に搭乗した。予定どおり飛行機は離陸し、夢の地パタゴニアへと向かった。