FUNKY MONKEY TRAVELERS

AURORA TOUR 1995 04 -アラスカ旅行記旅行記-

4.Hot Springs
翌日、同じロッジに宿泊していたアラスカ大学の学生に、チェナホットスプリングスまで車で送ってもらった。途中、世界最長の石油パイプラインを見た。北極海に面したブルートベイから太平洋に面したバルディーズまでの約1280キロを結ぶパイプラインは、万里の長城に次ぐ世界第2位の長さを誇る人工的建造物らしい。こんな極寒の地に、よくこんな巨大な建造物を作ったなと思いつつ、車は雪の森を抜けて走った。道中、すれ違う車はほとんど無かった。もしこんなところで車が故障したら大変なことになる。アラスカの人は冬にはあまり車で遠出をしない。遠いところに行くときはセスナを使うという。

 左から、僕、河西さん、佐伯さん、坂口君

左から、僕、河西さん、佐伯さん、坂口君

2時間ほどで目的地に到着した。深い雪に覆われた高級リゾート、チェナホットスプリングスリゾート。セスナの飛行場があり、小さなコテージが点在していた。日中はクロスカントリースキーや犬ぞりを楽しみ、夜は温泉につかりながら、オーロラを眺めるという贅沢なリゾート地なのだ。ここを日本の大手旅行会社が年間契約しているため、客の半数ほどが日本人だった。個人旅行であれば、なかなか泊れそうにない場所だったが、佐伯さんと河西さんに出会ったために泊ることができた。部屋は4室ごとのコテージになっていて、室内も広く大きなベッドが二つあった。とりあえず、休憩してから温泉にいくことにした。温泉は男女混浴で、水着を着て入浴しなければならない。なぜか僕は水着を持って来ていた。こうなることを予感していたのかもしれない。温泉は温室プールのように広く、屋外にはジャグジーの露天風呂があった。久々の入浴に冷え切っていた体が芯まで温まった。やっぱりお風呂はいい。温水プールで泳ぎ、それから屋外の露天風呂へ。しかし、露天風呂はぬるく、髪の毛はすぐに凍る。極寒の地での露天風呂はあまりいいものではなかった。
食事をして一休みしていると、坂口君の調子が急に悪くなってきた。彼はアラスカ最北端のバローに軽装備で行ったことを自慢していたが、実際はマイナス50度という寒さがボディーブローのように体に効いてきたのだろう。無理をしてはいけないので、彼はベッドで横になった。

完全装備のオーロラ観測

完全装備のオーロラ観測

ロッジから少し山の手に歩くと、小さな小屋があった。ここでオーロラを観測するみたいだ。部屋の中は真っ暗で、中には数人の日本人観光客がいた。大きな窓から見た夜空は雲ひとつなかったが、オーロラもまた全く見えなかった。周りの日本人の目は真剣だった。限られた時間の中で、高い旅費を払ってこんなところまでやってきたのだ。オーロラを見なくては何の意味もないという緊迫した雰囲気だった。
2時間ほどすると、奥から手前に伸びてくる一筋の控えめなオーロラが姿を現した。僕にとってのファーストオーロラ。レーザー光線のような美しいエメラルドグリーンのオーロラは、緩やかな弧を描いて、チェナの夜空にかかっていた。驚くほどの感動はなく、「やっと出たか」という感じだった。やがて、その1本の筋が2本,3本と増えていった。僕はカメラを用意して、10秒程度のシャッタースピードで数回レリーズした。体も徐々に興奮してきて、寒さを忘れてしまった。

オーロラはゆっくりと弧から渦状へと形を変えていく。しかし、次第に変化がなくなり、時間の経過と伴に、寒さと疲労で体が疲れてきた。いつの間にか夜中の1時を過ぎていた。「そろそろ部屋に戻ろう」ということになり、3人で山を降りて歩いていると、突然頭上に打ち上げ花火のような光の玉が“パッと”光って消えた。一瞬のことでびっくりした。既成概念としてあるオーロラとは全く違うオーロラだった。「うわ!」と思わず大きな声で叫んでしまった。真っ黒な夜空から突然、大きな光が現れたのである。信じられない光景だった。写真に収めることはできなかったが、あの不思議な光景は一生忘れることはないことだろう。オーロラ初体験は衝撃的なものとなった。