7.神秘の湖

険しい虎跳峡
乗り込んだバスは普通のマイクロバス。僕の他に数人の中国人が乗っていた。数年前に道路が整備され、アスファルトになって、とても走りやすくなったみたいだった。「歩き方」によれば、麗江・寧浪間は4.5時間ぐらいでアクセスしているとあった。このとおり行けば、午後3時か4時には寧浪に到着し、濾沽湖には日が暮れる前、午後6時ぐらいには着くだろうと思っていた。

土砂崩れが道を阻む
ああ!!崖崩れ しかし、それも誤算だった。ショベルカーの作業員は、待っている僕たちのことなんて全然興味がない様子で、道路とは関係の無い土砂を取り除く作業を続けていた。そして、その作業は1時間以上も続き、その間も僕たちはずっと待たされていた。頭に来たバスの乗客が、ショベルカーの作業員に文句を言ってくれたので、ようやく道路の土砂を取り除く作業をし出した。バスが通ることができたのは、1時間半後のことだった。
ようやく、賑やかな集落が見え、車や人の行き交いが多いエリアに入った。どうやら寧浪に到着したみたいだった。到着は予想外の午後6時過ぎ。すぐに、濾沽胡行きの乗合タクシーに乗り込んだ。運転手も僕たちのバスの客を待っていたらしく、乗り込むとすぐに出発した。
相変わらず、険しい山道が続く。8人乗りのステーションワゴンにフル乗車だったので、車もかなりきつそうだ。この車にもかなり長い時間乗っている。僕のデジタル時計は21:00と表示していた。ガイドブックには、寧浪から約80kmと書いてあったが、実際には、もっと距離があるのかもしれない。ましてや山道。歩き方の記載は、直線距離なんじゃないのか、一体いつになったら着くんだと、怒りと不安で胸がいっぱいになる。
あれこれ考えていると、車がとある建物の門をくぐり、中庭のようなところで止まった。辺りは真っ暗、建物にも明かりが点いていない。何となく怪しげな雰囲気に、ちょっと不安になったが、もしかしてと思ってドライバーに尋ねた。
「ここがルグフ?」
そうだ。彼は、首を縦に振って、車から降りると、来いという感じで、僕を建物の外に連れ出した。そういえば、暗いが静かな波音が聞こえ、心地のいい風が身体をすり抜けていく。建物の前の道を渡り、よく見ると、そこには深く黒い水面が一面に広がっていた。予想よりもずっとずっと広い。車に乗っているときには全然気がつかなかった。空には満点の星空が広がっていて、その星の明かりで、湖面が照らされ、美しくなびいているのがわかる。
ドライバーは、ほら「ルグフ」文句あるか?という感じで自慢げに僕に言ってくる。
「おおぉぉぉ!! ルグフ!!」
僕は大きな声をあげ、感嘆するしかなかった。
どうやら、この町は停電していて、どの建物にも明かりが点いていないようだ。しかし、星空に照らされ、湖面が浮かび上がることによって、「濾沽湖(ルグフ)」をより神秘的なものにしているようだった。
遥々来た甲斐があったとつくづく思った。