FUNKY MONKEY TRAVELERS

CROSS THE MIDDLE EAST 19 -中東旅行記-

19.ヌビアの巨人

アスワン行きの飛行機は、予定時刻よりも1時間遅れで出発した。エジプトでは外国人はエジプト人の4倍の料金を払わないと飛行機に乗れない。何とも不平等なルールだ。そのため、大きな荷物を持ったエジプト人が大勢乗り込んでくる。
アスワンについたのは午後8時過ぎだった。エジプト南部のこの地方をヌビアと呼ぶ。かつて、黒人支配の国ヌビアがこの地方を支配していた。そのため、人々の顔立ちもアラビア人の風貌ではなく、黒人の風貌であった。僕は空港にいたホテルの客引きの中から適当な安宿を選んだ。ホテルの親父に「アブ・シンベルに行きたいんだけど、ツアーとか、ないかな?」と聞いた。すると、「ツアーならあるよ。明朝4時にバスが来るから、それに乗っていけばいい。」と簡単な返事が返ってきた。ラッキー!
ツアーの内容は、アブ・シンベルに行って、帰りにアスワン・ハイダム、イシス神殿などを周るお得なものだった。早速予約して、しばらくの睡眠をとった。

ナセル湖

ナセル湖

明朝4時、まだ辺りは真っ暗だった。バナナを頬張って、アブ・シンベル行きのミニバスに飛び乗った。アスワンからアブ・シンベルまでは片道4時間の道程だ。砂漠の中を走っていると、砂漠の中に幾つかの大きな湖が見える。これが蜃気楼。そんな不思議な光景を目にしながら、バスは砂漠の中を爆走した。
4時間後、バスはアブ・シンベルに到着した。神殿の前には、美しいナセル湖を目にすることができる。青々とした大きな湖は、アスワン・ハイダムの建設のためにできた人口湖だ。アブ・シンベル神殿には、大神殿と小神殿の2つがある。大神殿には4体の巨大座像が、小神殿には8体の立像が、それぞれ湖を眺めるようにして建っている。大神殿の像の高さは約20m。建設者のラムセス2世自身であるといわれる4体の巨像が並んで建っている姿には圧倒される。遺跡の内部は、大きな柱が並ぶ部屋になっていて、壁には無数のレリーフとエジプト文字が彫られている。また、それらはライトアップされていて、美しく幻想的な雰囲気を醸し出していた。今まで見た遺跡にはない、繊細で美しい芸術だった。来て良かったと心から思った。
アブ・シンベル神殿の前で

アブ・シンベル神殿の前で

この素晴らしい遺跡にも、苦難の歴史があった。今から30年程前、アスワン・ハイダムの建設に伴い、アブ・シンベル神殿は水没の危機にさらされた。そして、その危機を救ったのがユネスコだった。ユネスコが世界に呼びかけ、アブ・シンベル神殿を分割・解体して、現在の高台へと移設するという離れ業で遺跡を救済した。このユネスコの動きが現在の「世界遺産」という制度へと発展した。そんなわけで、アブ・シンベルは世界遺産登録第1号なのである。

美しいレリーフ

美しいレリーフ


アブ・シンベルからの帰りに、世界屈指の巨大ダムであるアスワン・ハイダムへ。そして、アスワンのアギルギア島にあるイシス神殿にも行った。
イシス神殿は元来フィラエ島にあったのだが、アブ・シンベルと同じく、アスワン・ハイダムの建設のため、水没の危機にさらされ、現在のアギルギア島に移設された。
聖なる島と呼ばれていたフィラエ島。その遺跡群もまた、格別に美しく、大河ナイルを一段と華やかなものにしていた。美しい神々のレリーフ。ナイル河の辺でこんなにも美しいものを見ることができるなんて・・とても満足だった。
アスワンのイシス神殿

アスワンのイシス神殿

そして、夕方の飛行機で僕はカイロに戻ってきた。明日、帰国の途につく。