FUNKY MONKEY TRAVELERS

行くしかないだろVENEZUELA 07-ベネズエラ旅行記

7.天使が舞い降りた

翌朝、初めてのハンモックでの睡眠は、ハンモックからイメージするような快適で気持ちの良いものではなく、むしろ、無理な体勢をとって寝ていたため、腰や首が痛かった。Maru曰く「布の上に身体を対角線にしてやると、比較的フラットになり、安定して寝ることができるぞ」ということだった。
朝食後、熱いベネズエラコーヒーを飲みながら、目の前に広がるテーブルマウンテンを眺めた。頂上部は厚い雲に覆われていて、その巨大な全貌を目の当たりにすることはできない。昨晩は土砂降りの雨が降ったので、その水蒸気が蒸発し、霧や雲を発生させるのは当然のことだろう。問題は僕たちが目的地・エンジェルフォールに到着する正午までに、この厚い雲が消えているだろうかということだった。しかし、心配したところで始まらない。コーヒーを飲み終えると、簡単な荷造りをして、ボートに乗り込んだ。

岩場を縫うように進むボート

岩場を縫うように進むボート

遡るにつれ、川幅は徐々に狭くなり、水量も少なくなってきた。「ギィギィー」と船底を何度もこすりながらも強引に進む。覗き込むと川底がすぐそこに見える。水深20-30cmだろう。昨晩、相当の豪雨が降ったが、それでもこれだけ水が少ないのだ。もし降らなければ、ボートを降りて、押さなければならなかっただろう。この浅い水深に加えて、大きな岩が障害物となり立ち塞がる。船頭は、それを縫うように左右に陀を操作しながら上流へと船を進ませる。まさに職人技である。
こんな状況が3時間程続き、ようやくエンジェルフォールが近くにある岸辺に到着した。通常であれば、ここからもエンジェルフォールを望むことができるらしいが、木々の間から見えるテーブルマウンテンには大きな白い雲が頂上部を覆っていて、目的の世界最大落差の滝を見ることはできなかった。仕方ない。とりあえず、エンジェルフォールを間近に展望できるスポットを目指して、ジャングルの山道を1時間ほど登ることになった。「足は大丈夫なのか? それに雲は晴れるのか?」 一抹の不安を抱えながらも、ツアーに遅れることなく、歩き始めた。足元は大きな木の根と岩で、安定した足場は確保し難い。怪我した右足が左右斜めになった状態で、体重がかかると、足首に電流が流れるような痛みが走る。足場が悪いとかなり辛い。しかし、ガイドや同じツアーに参加している欧米人の歩くスピードはかなりハイピッチで、右足をかばって、ゆっくりと歩く気分にはなれなかった。僕は多少の痛みは我慢しながら、できる限りのペースで、木の根と岩が続く山道を登り続けた。出発前に、怪我している右足に湿布の上からテーピングでグルグル巻きに固定しておいたのが功を奏したようだ。痛みはかなりやわらいでいる。

ジャングルを歩く

ジャングルを歩く

歩き始めて、そろそろ1時間が経とうとしていた。大粒の汗が額を流れ、Tシャツに滴り落ちる。明らかに体力不足は否めない。でも、しばらくして前方にいた人の足元が止まった。今まで太陽を遮っていた樹木が途切れ、太陽に照らされた大きな岩場が見えた。
「やっと着いたのか?」
大きな崖のように切り立った3平米ほどの狭い岩の上に数人の観光客がカメラを抱えて座っていた。それまで重かった足が急に軽くなり、急いで岩場に登る。すると、そこには僕のイメージどおりの光景が広がっていた。雲のない真っ青な青空を背景に垂直に切り立った赤茶色に輝く巨大な岩山がそびえ、その中央に真っ白い一本の滝が可憐に流れ落ちていた。青い空と白い滝とのコントラストは何ともいえない。滝上部は激しく噴出しているが、中ほどからその落ちるスピードは遅くなり、水が地上に辿り着く頃には霧となり、広がり、ゆっくりと舞い降りる。その光景がこの滝の落差がどれだけのものかを物語っていた。

エンジェルフォール

エンジェルフォール

世界最大落差979m。東京タワーの約3倍の高さ。これほど垂直に高いものを今まで見た記憶がない。僕はMaruが撮影するビデオの中でエンジェルフォールの感想を求められ、次のように答えている。
「感想なんてない」
これは正確に言えば、「思い浮かばない。言葉では表現できない」という意図で発言したものだ。
もし、それをどうしても言葉してくれと言われたら、こう答えるだろう。
「行くしかない。そして、見上げるしかない」

山頂部分

山頂部分

 

霧状になっている

霧状になっている