FUNKY MONKEY TRAVELERS

NEPAL TREK 10 -ネパール旅行記1998-

Thank you!

意識を失っていたのは数十秒の間だっただろうか? 気が付くと僕の座席の周りに座っていた人たちが僕を取り取り囲むように眺めている。前の座席の人も、椅子の上から僕を覗き込んでいる。
「大丈夫か? 大丈夫か?」そんなような言葉をネパール語で言っているのだろう。やけに騒がしい。
体中の汗腺からは、汗が噴出している。体温も相当高いような気がする。手と足の指は硬直し、痙攣し、震えていた。いわゆる「コブラ返り」というやつだ。全く思うように動かない。しかし、体は思うように動かなかったが、脳は冷静だった。
「困ったものだ・・どうする・・やばいな・・何とかならないかな・・しかし、みんなすごい形相だな・・とりあえず礼を言っておこう・・Thank you ! thank you !」と。そんな言葉が口に出てくる。脳と体はまるで別人のように思えた。でも現実は違う。
僕の痙攣を見てみんなが指先をマッサージしてくれている。窓を開け、僕のシャツのボタンを外してくれる。水の入ったベットボトルを差し出され、水を口にする。徐々に痙攣はやんできた。
「一体、どうしたというのだ!」 これまで、いろんな所を一人で旅してきて、体調を崩したりすることはあった。しかし、突然、気を失うというのは初めての経験だった。よくお酒を飲んだ帰りに、地下鉄の中で気分が悪くなって・・ということはあった。どちらかというと貧血しやすいタイプなのかもしれない。でも、今回はその前兆というか直接的な要因が見当たらなかった。敢えて言うならば、旅の疲れからきたものなのだろうか。運悪く、こんな時に限って、相棒のクルはいなかった。しかし、隣の兄ちゃんは超親切なやつだった。僕のことをすごく心配し、面倒を見てくれた。水をくれ、トイレにも連れて行ってくれた。
周りの人たちのお陰で何とかカトマンドゥに到着することができた。でも、一人でホテルに行くことは無理っぽかった。隣の兄ちゃんが「どこのホテルに泊るんだ?」と聞いてきたので、財布の中から前に泊ったホテルのカードを差し出した。
「タメルか・・ここなら俺の店の近くだから、一緒に帰ろう。」ということになった。タクシーに乗せてもらって、彼の店へ。彼は土産物屋を経営しているらしく、英語も上手い。その辺りが非常にラッキーだった。店からホテルに電話してくれ、ホテルの従業員がリキシャで僕を迎えに来てくれた。
体温計の水銀は38度のラインに達していた。風邪をひいてしまったようだった。とりあえず、ホテルの店主に水を注文し、「リンゴを部屋に持ってきてくれ」と言い、部屋のベッドに倒れ込んだ。しばらくすると女の子が皮をむいたリンゴを持ってきてくれた。
「ありがたい」
リンゴを食べて、風邪薬を飲んで寝た。何とか助かったようだ。